プレイバックNEM~起源に迫り、未来に臨む

 最終更新日2019/04/14 公開日2019/04/14    この記事は 約21分 で読めます。

2019年後半、NEMは新しいコアエンジン「Catapult」を搭載したNEM2へと進化する予定です。その大型アップデートを前に、誕生時のNEMのことを当時の記事から振り返ってみようと思います。

そこからNEMの理念や現在の仕様、目指すべきところを再確認できると思います。

尚、原文は古いものなので、当時と現在ではNEMに関わる人や予定されていた技術仕様などが変わっていることもあり一部をカットしていますが、どういう思いで作られたのか、何を目指す暗号通貨なのかなど、理念的な部分は存続している(←重要)と考えますので、ぜひそういった点に着目して頂ければと思います。

(時には、「誰が言ったか」よりも「何を言ったか」に重点をおいて理解することも必要で、それが出来なければ、意に反して中央的だったり宗教的だったり独裁的だったりな方向に偏っていくのかなとも思うことがあります)

本記事の元となるのは2015年4月1日及び7日に暗号通貨メディアより配信されたものです。ネメシスブロックと呼ばれるNEMの最初のブロックは2015年3月29日で、世間にお知らせという形で「公開」されたのは同3月31日、そのすぐ後の記事になります。

和訳記事は記者から元コア開発陣の関係者へのインタビュー形式となっています。枠外で筆者の知識の範囲内で補足を入れておきます。では読んでいきましょう。

NEMローンチ、Proof-of-Importanceによってこれまでの経済に挑む

ローンチ時のNEM公式サイトのトップページ

制作に1年をかけた後、暗号通貨のNEM (New Economy Movement)が公式にローンチされました。

Q:NEMのチームにはどんなメンバーが参加していますか?また、彼らと働いた感想はどうですか?

A:NEMのチームと働けることは素晴らしい経験です。まず、メインの開発者が素晴らしいです。5人のコア開発者のうち、何人かは博士号を持っていて、他のメンバーも有名企業でコーダーとして活躍した素晴らしい職歴を持っています。

Gimre、BloodyRookie、Jaguarは素晴らしいプログラマーで、私がこれまで出会った中でも最高の頭脳を持つ人々です。私は彼らから毎日新しいことを学んでいます。このチームに参加できることは本当に光栄なことです。

NEMコアのコードを書いている5人のメイン開発者(*1)の他には、私たちをサポートする開発者たちがさらに10人おり、NEMを可能な限り多くの国々に届けるために20人の翻訳者がいます。さらには7人の専属スタッフから成るマーケティングチームがあり、精力的な活動を行っています。

このように私たちのメインチームには40人以上が在籍していて、それに加えて40人のコミュニティメンバーが非公式の役割を担っています。彼らはとても積極的で、よく手助けをしてくれています。

私たちのフォーラムや他のメディアには常に新しい参加者が加わっています。約800人のフォーラムメンバーがおり、Facebookにも同様の参加者が約2000人います。私たちはまだ小さなコミュニティですが、私たちがローンチをしたことで、新しいマーケターやコア開発者が増えるだけでなく、コミュニティが活気づき、よりアクティブなものになってくれればと思っています。

*1…後にメインの開発者は5人ではなく、現在も開発を精力的に続けているGimre、BloodyRookie、Jaguarの3人であることが判明します。その他の2名はほぼ開発には関わっていなかったようです。


Q:なぜ新しい暗号通貨を作り始めたのですか?ビットコインでは何か問題があったのでしょうか?

A:NEMは世界経済の問題だけでなく、他の暗号通貨の抱える問題も解決するという目標を持ってスタートしました。そうした問題の一つには富の配分があります。

法定通貨を基盤とした経済では、もっとも裕福な1%の人々が、残りの99%の人々の財産よりも多くの富を手にすることになります。ビットコインのような暗号通貨では、富が集中して存続が脅かされています。他の暗号通貨も同様の批判を受けています。

ある程度の不公平は必ずしも悪いことではありません。そしてもちろん、私たちにはそれぞれ大きな個人的差異があります。しかし、それが機会の平等を脅かすとしたら良いことではありません。もし一人が通貨全体をダンピングして破壊することができるとしたら、そのことで他の人々の機会が奪われてしまいます。

私たちはNEMによって、集中した富を一般の人々に再分配したいと本気で考えています。今日の世界では、富は権力を持つエリート、銀行、政府によって支配されています。NEMでは、私たちは一般の人々に力を与えたいと思っています。だからこそ、私たちのモットーは「新しい経済はあなたから始まる」なのです。

XEM市場価格の値上がり興味が多勢であることは受け入れるべきことですが、「アイデアないし開発者じゃないし」と、ただ期待して待つのではなく、経済圏に参加する(例えばNEM関連アプリやサービスを使い、伝える)ことで、1人1人が直接的に価値向上に加担できるのも醍醐味な世界です。


Q:NEMとはどんな仕組みで、どんな問題を解決してくれるのですか?

A:NEMの本質とは、個人に力を与えることです。今日の経済システムに存在する構造的な問題を解決することによって、私たちは人々の人生をより豊かなものにしたいと思っています。お金は人生を定量化したものだと考えることができます。私たちはみんな、有限で取り戻すことのできない時間をお金の追及のために費やすからです。

したがって、経済的な力というのは人生そのものに対する力ということになり、他人に平等な経済的機会を与えない人間、特に権力の中央集権化や未来の世代から富を前借することでそれを行っている人間は、地球全体に大きな害を与えており、人類の苦しみの原因なのです。

NEMのプラットフォームは、人々が価値の譲渡(XEMの送金)と情報(暗号化したメッセージの送信)を直接コントロールできるようにします。マルチシグネチャアカウントによって、人と協力して、お金を他者に安全に送金することが可能になります。

今後のリリースでは、カラードコインのような機能により、任意のデジタル資産を相互に譲渡することが可能になる予定(*2)です。こうした機能が組み合わさることで、中央集権的な権力に依存せずに、人々が自身の財産についての権限を手にすることができる包括的なプラットフォームが誕生(*3)します。それは人々がより効率的に暮らす手助けにもなります。

*2…モザイク(及びネームスペース)のこと
*3…NEMは現在「スマートアセットブロックチェーンプラットフォーム」と称されますが、そのアセットとは資産、財産、資源、有価物などの意味があります。


Q:Proof-of-importanceとは何でしょうか?proof-of-workやproof-of-stakeと比べた場合の利点も教えてください。

A:NEMでのトランザクションはブロックとして整理され、ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳を形成します。NEMには中央権力が存在しないため、次のブロックの作成者が誰になるかはコンセンサスアルゴリズムによって合意、決定され、誰もがその作成者がブロックを作る権利があると知ることになります。

NEMのProof-of-Importance(PoI)とは、合意形成を担うアルゴリズムの名前で、その仕組みでは"重要度"とはトランザクショングラフのグラフ理論的重要度を意味します。

NEMの経済圏はトランザクションによって成り立っており、ここでの意図にしたがって言えば、トランザクショングラフにおけるあるアカウントの重要度とは、そのアカウントの経済圏における重要度とほぼ同じものになります。

ビットコインのProof-of-Workはおそらくもっとも有名な確率的ビザンチンコンセンサス(ナカモトコンセンサス)でしょう。その仕組みでは、コンピュータが互いに競い合って計算問題に対する答えを見つけ出します。

ビットコインは、ビザンチンコンセンサスにとってはこれが合理的なソリューションであると示しましたが、残念なことにこの仕組みには非常に高額なエネルギーコストがかかります。というのは計算能力と電力が無駄な計算をするために消費されてしまうからです。

さらにProof-of-Workでは、資金力のある人ほどより多くのハードウェアを買って計算問題を解決することができるため、裕福な人はさらに裕福になる仕組みになっています。

有名なところではNXTに実装されているProof-of-Stakeは、Proof-of-Workを大きく進歩させたものでした。というのは、Proof-of-Stakeでは確率的ビザンチンコンセンサスを達成するために、電力などの有限のリソースを大量に消費する必要がないからです。

その代わりに、アカウントのステーク、つまり残高(バランス)を使って、確率分布が行われ、その後サンプル抽出が行われ、誰がブロックチェーン内のブロックを作成するかが決定されます。

アカウントの残高と情報は全員に知らされるため、そのブロック作成者が正当な権利を持っていると証明をすることが可能です。残念なことに、この仕組みも裕福な人がさらに裕福になるという状況を生み出します。

なぜなら、ブロックの作成者がトランザクション手数料を回収することができるからです。さらに、ある人物が裕福だから(多くの残高があるから)といって、そうした人々は必ずしも経済圏全体に建設的な貢献をしているわけではありません。

Proof-of-Importanceは、経済活動に積極的に参加したアカウントに報酬を与えることで、Proof-of-WorkとProof-of-Stakeを改良したものです。アカウントの残高、誰と取引を行ったか、どれほどの量を取引したか、といった要素がすべて総合的に計算されて、アカウントの重要度が算出されます。

この仕組みによって、NEM経済圏を支援したアカウントに効果的に報酬を与えることが可能で、一方で、その計算に使われるXEMの一時的な既得化スケジュールによって、アカウントの重要度はアカウントの分割の際にもほぼ不変となり、シビルアタックが現実的に不可能になります。

CatapultではこのPoIが改良され、PoS+(PoIのライト版)になる計画があり、現在よりも富の再分配とその機会均等性が高まる期待があります。


Q:あなたは、NEMのProof-of-Importanceアルゴリズムは、積極的にNEM経済圏に参加したアカウントに報酬を与えることによって、Proof-of-WorkとProof-of-Stakeに改良を加えたもので、したがって経済圏全体にメリットのある仕組みだと発言しました。

しかし、この仕組みは富の集中と、参加の程度に基づく経済力を生み出すのではないですか?資金が豊富な人はより多く参加できるのでしょうか?これは中央集権化や階層化の一形態ではないのでしょうか?

A:ハーベスティングは財産を個人の増やすためにあるのではありません。そのため誰でも簡単にハーベスティングが始められるようにもなっています。400ドルのコンピュータがあれば、誰でもハーベスティングをする機会が得られます

実世界の経済では、ビジネスを行っている人々は、サラリーマンと比べて、かなり高い確率でビジネスで使う資金のベロシティ(流通速度)を増加させることができるでしょう。

NEMでは、そのことは高いPoIにつながります。しかし、ハーベスティングによって財産を蓄積することができるわけではありません。なぜならハーベスティングは全体の人口に基づいているからです。

シェアできるプール金はトランザクション手数料の合計から提供可能な分に限られています。ベロシティが高ければ高いほど、ユーザーの数も増加する可能性が高く、したがって、ハーベスティングの利権も弱まります。

結果として、ハーベスティングだけで財産を蓄積することは簡単ではありません。ハーベスティングで誰かが少し有利になることはありますが、それ自体では財産を築くことはできません

資金力の豊かな人々は、より多くのトランザクションを実行する傾向がありますが、そうしたトランザクションが幾何学的にそうした人々の財産を増加させるわけではありません。そうではなく、そうした人々は、実世界と同様に、経済圏に参加することによって財産を増やす可能性が高まるのです。

以上が、私たちなりの機会平等主義、つまり公平さと平等の定義です。ハーベスティングだけで裕福になれる参加者は一人もいません。


Q:なぜNEMは常にNXTと比較されるのでしょうか?NEMはNXTを基盤としているのですか?この2つのプロジェクトはどのように関連しているのでしょうか?

A:まず非常に簡潔に言えば、私たちはNXTのコードをNEMの基盤にすることを検討していました。しかし、実際には、この選択肢はそれほど真剣に検討されたわけではありません。私たちは初期段階で新しいコードをゼロから作成しようと決めていました。

NEMに参加した人々の多くはNXTのコミュニティでも活動しています。おそらくそのことが原因で、NXTとNEMはしばしば関連性があると考えられているのでしょう。

NEMとNXTの間には多くの違いがあります。アンチスパム保護、ノードの信頼性を保証するEigentrust++、ネットワーク上のあらゆるノードと安全に通信するための委託ハーベスティング、そしてブロックチェーンを活用したアラートを備えたマルチシグアカウントなどです。

さらに私たちには累進的な手数料の仕組みと、パスフレーズの代わりのウォレットファイルがあります。NEMとNXTをよく観察すれば、どちらもJava(*4)で書かれていることに気がつきますが、その後には両者の違いがはっきりと見えてくるでしょう。

*4…CatapultではC++に移行されます。尚、SDKはTypeScript/JavaScriptやJavaなど複数の言語用のものが開発されています。

Q:NEMのコインはどれほどの量がリリースされ、どのように分配されたのでしょうか?ステークホルダーにはどんな人々がいますか?

A:ローンチの際に8,999,999,999 XEM(XEMはNEMエコシステムの通貨です)が発行され、およそ1500人に分配(*5)されました。XEMの一部は様々な目的のために保管されました。

例えば、将来的な発展に対して報酬を与えるため、iOSとAndroid向けのモバイルウォレットの作成、ノードの運営者への報酬、自律分散型組織(DAO)として運営されるコミュニティファンドの立ち上げ、コミュニティがアイディアを提案できるマーケティングファンドの作成、NEMの設立メンバーに1オンスの純度999シルバー製の限定NEMコインを与えるというシルバーコインプロジェクト、NEMと法定通貨がコンスタントに両替されるのではなく、そのままで商品やサービスと引き換えに人々の間で取り引きされる持続可能な循環構造を作り上げるサポートを行うためのNEMSELFファンド(*6)などです。

そうした追加の資金は開発者や重要メンバーのボーナスのために使われることはなく、マルチシグアカウントによって管理されたうえで保存され、上記のプロジェクトが進展した場合にのみ、出金されます。

*5…公募されたbitcointalkでのアカウント数なので、実際は1人が複数の口数を受け取った可能性はあります。

*6…これらのファンドはこれまで効果的に活用された実績がとても少ないです。NEMSELFファンドの詳細は今回はじめて知りましたが、2019年4月現在およそ8.7億XEMがストックされています。

それをNEM決済を導入するお店やサービス、それらを拡大するための開発や営業などあらゆる協力者への直接支援に費やせるものではないかと感じましたので、今後、コミュニティが声を上げて有効に活用されるよう働きかけていくといいかなと思います。

Q:NEMでの将来的な計画はありますか?NEMはどのようにして新しい経済活動となっていくのでしょうか?

A:NEMはただの暗号通貨に関する技術的なソリューションではありません。私たちは数千の個人からなる運動で、ともに協力をして世界中の個人に力を与えたいと思っています。

この目標に向けて、私たちは政府、企業、コミュニティ、個人と協力して、経済をより効率的なものへと変え、人々がより生産的な人生を送れるように支援したいと思っています。

以上、NEMがこの世に登場して間もない時にリリースされた記事でした。

NEMの本質が個人に力を与えることで、それが「新しい経済はあなた自身から始まる」というモットーになっていたという部分や、NEM経済圏に参加することによって財産を増やす可能性が高まるという機会の平等主義は、Catapultを搭載したNEM2になっても、変わらぬ共通理念として忘れないようにしたいですね。

オマケ~ブロックチェーン版インスタがNEMで?

当時のことを調べていると、次のような発見もありました。


これはインスタグラムのように誰かによって撮影され公開された写真を、第三者がXEMでライセンス使用料を支払って、例えば自分のサイトやSNSで挿絵やアイキャッチなどで二次利用できるようにするものだと思います。

そのような既存の大手サービスにはshutterstockやiStockというものがありますが、その非中央集権版とイメージするといいかもしれません。よって、大手だと高額な利用料が、NEMを使えば時価にして10円なり50円なりでの少額単品販売も容易になります。

販売、というよりも…(アイデア)

わざわざ「販売」という形にして堅苦しくするよりも、写真に「一定額以上の投げ銭」をすることで二次利用の権利も得ることができるように訴求する方が良さそう。

他に、人気の写真ほどその投げ銭最低額が上がっていくとか、逆に多くの写真に投げ銭している人ほどその最低額が上がらないとか、サービス利用頻度やユーザ評価によってモザイクトークンが与えられ特典と交換できるとか、裏側は複雑でもそれをユーザに感じさせない仕組みで、楽しくわかりやすいサービスになると盛り上がりそうで良さそうです。

日本発ではFiFiCという歩いた距離に応じてモザイクトークンがもらえるという人気のNEM系アプリがありますが、この写真系アプリと連携することによって「歩いてトークン撮ってトークン」というシナジー効果も出せそうで、流行りのトークンエコノミーが身近になり経済圏が広がる気がします。

日本から登場しないかな(チラッ

一般層に根強く拡大させるにはこういったプロジェクト(プロダクト)が次々と開発され、規模に関わらず市民権を得ていくことが必要不可欠に思います。

呼称いろいろ

他にはNEMmer(ネマー)やNEMmest(ネメスト)というのも聞いたことあります。実は未だに「ネンバー」にはしっくりこないのですが、日本的にはネムラーが馴染みやすいのでしょうか、しかし「ラ」がどこからきたのか…と考えるとネムれなくなりそうです。

 - NEM(ネム) ,

  著者プロフィール

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WEBデザイナー/ディレクターとしてのリーマン生活を脱却し、FX専業(兼業?)トレーダーをやりながら、MT4のEA/インジケーターの開発やFX関連情報サイトを運営していました。

今ではもう暗号通貨に絞って福岡を拠点に隠密活動しています。主にNEMをガッツリ、EthereumのDappsは趣味程度に。10年近いトレーダー経験を活かし、暗号通貨相場のテクニカル分析もやってます。

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