カスタマーエクスペリエンスと運営効率の向上~EC業界におけるNEMブロックチェーンのユースケース

 最終更新日2019/07/27 公開日2019/07/27    この記事は 約16分 で読めます。

こういった実現可能性の高いユーティリティの部分に価値が見出される日が来ます。

NEMとマレーシアと言えば、東南アジア地域における教育や普及のハブ的要素となるNEMブロックチェーンセンターや、NEMブロックチェーン上で世界初の"製品が正規品であることを保証するデジタル証明書"を提供しているLuxTag社を連想し、世界でもっともNEM活に積極的な地域というイメージもあります。

そんなマレーシアはEC(Eコマース/電子商取引)を国家のデジタル経済の主要項目とするほど力を入れており、国内EC利用率は日本以上では?というデータにも納得の雰囲気を感じます。しかしながら、配送トラブル(遅延・破損・不達)は日本国内の通販事情と比べると結構多いようなのが悩ましい問題の1つのようです。

今回和訳した記事にはECが抱える問題を提起し、NEMブロックチェーンを用いていかに「シンプルかつコスト効率的」に解決可能か?が書かれています。具体的かつ実現性が漂ってくる文献はNEMにおいて貴重なので、ぜひご一読いただきたいです。

筆者のAndy Roy Sian氏はNEMマレーシアにおける「政府および公共部門」のリーダーとされ、大きな制度的変革をリードする立場にあるようです。マレーシア政府とNEMといえば去年のこの記事のように割と接近しているので、そこはかとない期待感を得ています。

また、本記事では「フルフィルメント」という言葉が重要キーワードとなっているので覚えておいてください。フルフィルメントとはネット通販などで「客が商品を注文し、手元に届くまでに要する業務全体」のことを表します。

発注と仕入、検品や梱包、発送と出荷、在庫管理に返品処理などがそこに含まれ、広告宣伝や商品開発などの販促活動は含まれないことが一般的です。

またそれらを請け負うサービスのことを「フルフィルメントサービス」といい、運送業者や大手EC運営企業などがそのようなサービスを提供しています。

では、以下が本題です。参照画像まで訳す余力がなかったです笑

概要

EC(Eコマース/電子商取引)は国家のデジタル経済の課題項目の主要な項目の1つです。マレーシア政府は自国の経済に対するECの重要性を、2つの大きな理由によって認識しています。

まず第1に、そしてもっとも大きな理由として、ECはマレーシア国内の既存の企業がこの先も持続可能であり続けることを可能にしてくれます。そして第2に、ECはマレーシアのビジネス市場へのアクセスを、国内のみならず世界中で拡大する手助けをしてくれます。

全国EC戦略ロードマップには次のように書かれています。

「2014年までに世界のECセールス(B2C)は1兆円を突破しており、すべての大陸で2桁台の成長をしています(今後4年から5年で2倍になるでしょう)。

マレーシアにとって、ECは未来そのもの、つまり国内の既存の企業を保護する手段であり、さらには新しい可能性を追求する方法でもあるのです。

もし成功すれば、マレーシアはASEAN地域において、さらにいずれは世界において、他国と対等な競争力を持てるようになるでしょう。」

2016年の10月13日にローンチされたマレーシアの全国EC戦略ロードマップ(NeSR)は、最重要のECアジェンダとして、マレーシア政府の戦略および目標を包括的に示したもので、地元や世界中のECエコシステムの担い手たちと緊密に協力を行うための戦略プラットフォームを提供しています。

顕著な成果としては、2017年11月にクアラルンプール国際空港で行われた、デジタルフリートレードゾーン(DFTZ)の公式ローンチが挙げられます。DFTZには2つの大きな目的があります。まず、「マレーシアを地域的なECフルフィルメントハブとして確立する」こと、そして「ECを通じてマレーシアの中小企業の輸出を推進すること」です。

最初の目的のもとで、迅速かつシームレスな国際ECフルフィルメント処理を提供する、国際貿易推進のためのエンドツーエンドのプラットフォームが誕生することになります。

その一方で、第2の目的のために、リアルタイムの貨物トラッキングを活用してエンドツーエンドの貨物管理の所要時間を短縮し、データ分析と機械学習を通じた運用を推進することによって、ECフルフィルメントの効率性と有効性を向上させることに注力します。

一般的な印象とは対照的に、ECのトピックには、EC市場とEC決済サービスだけでなく、ECのバリューチェーン全体においてもっとも重要な要素であるECフルフィルメントサービスも含まれます。ECフルフィルメントの分野それ自体の内部にも3つの下位区分があります。

つまり、注文管理および倉庫保管サービス輸送および物流サービスラストワンマイル(最終拠点からエンドユーザーへ)の配送サービスです。

この記事では、ECフルフィルメント企業がブロックチェーン技術を活用し、優れたカスタマーエクスペリエンスと効率的な運営を実現するというビジネス上の目的を達成するための方法について高いレベルで議論していきます。

業界における課題

Peerless Research Group(PRG)が行った調査によれば、数を増し要求も多いECの顧客を満足させるという業務は、ECフルフィルメントのプロセスとそれを担当するマネージャーたちにとって、大きな負担となっているようです。

同調査は次のように結論付けています。

「多くの回答者が、そうした増幅していく課題に対応する能力についての不安を述べている。半分以上が、過去2年間で顧客の要求は劇的に高くなったと回答し(51%)、その他のほとんどの回答者(37%)も、期待がエスカレートする一方で、圧力はそこまで極端なものではないかもしれないと答えている。」

そうした圧力が原因で、ECフルフィルメントのサービスプロバイダーは、自社の注文受付やフルフィルメント運営を行う方法を、より注意深く観察しているのです。さらに、同じ調査では次のようにも述べられています。

「ECフルフィルメントのサービスプロバイダーは、より多くの注文を、より迅速に、より安価に、より正確に処理することは、多くの企業が取り組んでいる課題だと考えている。そして、運営をサポートし、顧客のロイヤルティを維持することを考えれば、不十分なマンパワーで商品を送り出すこともまた、大きな懸念材料となっている(25%)」

上記のことに加え、調査ではさらに、

「運営の効率性を制約している要素を挙げてもらった際に、多くの回答者は労働力不足、不十分な職場環境、基準以下の在庫管理などが、優れた運営効率を達成するための組織の機能の妨げになっている。」

と答えています。

上記のような課題を軽減するために、ECフルフィルメントサービスプロバイダーは、現在の設備を変更することで、そうした課題に取り組んでいます。

もっとも一般的な取り組みが2つあり、それはより自動化されたシステムを配置すること(44%)と現在の労働力にマンパワーを追加すること(37%)です。雇用プロセスの改善戦略や既存の設備の拡張もまた、一般的な選択肢です。

上記の内容に加え、調査ではさらに、ECフルフィルメントサービスプロバイダーは運営上の課題を抱えていることも明らかになり、

「在庫管理に関するボトルネック(39%)がサプライチェーンの適応性に対するもっとも一般的な障害になっていることが示された。サプライヤーが原因の遅延に加えて、注文処理や生産もまた、調査対象の間では一般的な問題となっている。」

とあります。

点と点を結ぶ

ブロックチェーン技術は、ECフルフィルメントサービスプロバイダーが直面するそうした問題を解決するにあたって、最も有力な技術的プラットフォームの候補です。

カナダのトロントで今年開催されたBlockchain Revolution Globalの期間中に、Dale Chrystie氏(FedExのビジネスストラテジスト・ブロックチェーンフェロー)、Mahesh Sahasranaman氏(UPS Supply Chain Solutionsの中心的アーキテクト)、Eugene Laney氏(DHL USAの国際政府業務担当)が、1つのステージに上がり、ブロックチェーンは世界的なサプライチェーンを変革するという点で同意するという、歴史的な瞬間がありました。

Chrystie氏は次のように述べました。

「これはプロセス改善の取り組みではありません。これはブレークスルー(本質的な課題を打ち破る革新的な解決策)についての議論であり、将来の世界的なクリアランスがどのような状況になっているかを考えるための新しい方法です。」

3人は全員、統一規格を直ちに作り上げることと、世界的なサプライチェーンに向けたブロックチェーン技術応用の取り組みに各国政府がすぐに参加することが必要だという点で意見が一致しました。

Laney氏は

「ブロックチェーンはチームスポーツであり、単独でカスタマーサプライチェーンを完成させている企業は現在存在しません。」

と述べ、自社の運営だけでなく世界的なサプライチェーン市場のエコシステムに対する、ブロックチェーン技術の重要性と影響力を強く認識していました。

Sahasranaman氏もその意見を支持し、次のように述べました。

「UPS、FedEx、DHLで構成されるサプライチェーンパネル委員会は際立った取り組みと言えるでしょう。つまり、企業はどれだけ激しく競争していようとも、すべてのサプライチェーン参加者にとってのブロックチェーン技術の恩恵を最大化できるような分野においては、協力の努力をしなければならないということです。」

政府がこのテーマに参加することは必要不可欠です。彼らの規制機関としての役割は、この問題のボトルネックを解消するためのカギとなるからです。

FedEx LogisticsのCEO、Richard Smith氏が次のように述べるのも当然です。

「政府こそが当事者なのです。政府はブロックチェーンを広く採用するように命じることができます。なぜ旗を振って、今から5年後にすべての輸入業者に対してブロックチェーンの使用を義務化すると言わないのでしょうか?それだけが、ビジネスを鈍化させずにブロックチェーンの普及を達成する唯一の方法であるのに。」

NEMの活用

ブロックチェーン技術がECフルフィルメントのプロセスに導入できる可能性が高い分野の一つに、オンラインで注文されて顧客に配送される商品のリアルタイムによるエンドツーエンドのトラッキング(追跡)が挙げられます。

注文された商品をモザイクでトークン化

NEMブロックチェーン技術の「スマートアセットシステム」では、オンラインで注文された商品は「モザイク」(デジタルアセット)として表されます。その「モザイク」はNEM Walletか、ECフルフィルメントのプロセス全体に携わる運営スタッフのユーザーアカウントに保存されます。

注文管理および倉庫保管、輸送および物流、そして最終的なラストワンマイルの配送作業にいたるまで、商品の動きはウェブベースのブロックチェーンエクスプローラーを通じて、ブロックチェーン環境の内部で監視が可能です。

ブロックチェーンエクスプローラーはリアルタイムの「発送品の追跡」ページとも言うことが可能で、さらにカスタマイズを施すことで、関係するECフルフィルメントサービスのスタッフ、EC業者、商品を購入したオンライン顧客、さらには政府の規制機関までもが、そこに安全にアクセスすることが可能になります。

ブロックチェーンエクスプローラーとブロックチェーンを活用した「発送品の追跡」ページを使うことで、注文されて処理されている商品に関係するあらゆる問題を、すべての関係者が特定し、直ちに修正することが可能になります。

企業ニーズをさらに満たせるCatapult

次に、NEMは独自機能を導入する予定で、とりわけ、NEMの次世代ブロックチェーン技術“Catapult”による「マルチレベルマルチシグアカウント」と呼ばれる機能が、2019年の第4四半期にリリースされる予定となっています。

この独自機能はECフルフィルメントプロセスに非常に適したものであり、それを活用することで、あるプロセスに携わる様々な関係者がNEM Catapult上で連携を取ることが可能になります。

上記の機能に加えて、NEMブロックチェーン技術は多機能なブロックチェーンプロトコルであり、ECフルフィルメントに対する企業のニーズに応えるのに適したものとなっています。

NEMの「スマートアセットシステム」を用いることで、NEMアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)とソフトウェア開発キット(SDK)がCatapult上で利用可能になり、ECフルフィルメントサービスプロバイダーは、自社のバックエンドシステムに容易にNEMを統合することが可能になるでしょう。

この独自の機能性により、バックエンドシステム全体を交換する必要性がなくなり、投資利益率(ROI)が守られ、既存のシステムの総保有コスト(TCO)が改善します。

最後になりましたが、重要なこととして、NEMブロックチェーン技術は、ECフルフィルメントサービスプロバイダーが使うにあたって、現在のシステムよりもはるかに安全なものです。なぜなら、ブロックチェーン上での「オンチェーン」スマートコントラクトを許可しないからです。

他のブロックチェーンプロトコルで利用可能な「オンチェーン」スマートコントラクトをデプロイする(システムを利用可能な状態にする)ことで、バグやコードエラーなどのセキュリティ上の抜け穴が修正できない状態になってしまえば、ECサービスプロバイダーにとって、すでに合意した最初のプロジェクトコントラクトの価値に加えて、大きな費用と時間がかかることになります。

さらに、「オフチェーン」のスマートコントラクトを常に使用することで、より安全で柔軟性の高いビジネスロジックやコードデザイン、そして実用前の検証が可能になります。

要約すれば、NEMブロックチェーンは待ち望まれていたエンドツーエンドのビジネスプロセスの透明性と、ECフルフィルメントプロセス全体に携わる関係者についての完全な説明責任を強化することで、大きな価値を提供してくれます。

上記で述べた機能によって、ECフルフィルメントサービスプロバイダーは、自社のバックエンドのビジネスプロセス全体の運営効率を向上させつつ、彼らのオンライン顧客とEC業者の期待に今以上に応え、さらにはそうした期待を超えることが可能になります。

まとめ

まとめると、他のブロックチェーンプロトコルと比較した場合、NEMブロックチェーン技術を使うことで、ECフルフィルメントのエコシステムに参加する関係者は、既存のECフルフィルメントシステムを向上させる際のプロセスを、より手短で、シンプルで、コスト効率的なものにすることが可能です。

NEMはECフルフィルメントエコシステムの企業との将来的な協力の可能性を熱心に模索しており、世界的なEC産業の発展と成長にさらに貢献しようと尽力しています。

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