ヘルスケアブロックチェーンとNEM

 最終更新日2017/11/23    閲覧数3,513回   この記事は 約13分 で読めます。

ヘルスケアブロックチェーンとNEM

この記事は、NEMのパブリックもしくはプライベートブロックチェーンをヘルスケア部門内でのデータ管理に使用するという可能性について論じるものです。ブロックチェーンを採用することで、いくつかの重要なアドバンテージが得られます。

・患者中心のアクセス管理
・データのセキュリティ向上
・患者データ共有の改善
・利用可能なデータの増加
・医療研究の機会開拓
・ウェアラブルセンサデータの導入
・患者報告アウトカム方式(PROM)の導入

ユースケース

ハンナは慢性糖尿病患者です。彼女は定期的に病院と総合診療医(GP)を訪れ、病状を経過観察してもらわなければなりません。そうした診療には数本の血液サンプルの採取や、毎年の眼科検診も含まれます。

定期的なチェックに加えて、彼女は毎日自分でインスリンを注射して、その後に血中のグルコースを測定しなければなりません。さらに、Fitbitを使って身体的活動と睡眠のパターンも記録しています。ハンナに関するデータは多く存在しており、すべてのデータを記録しておくことや、誰が彼女のデータへアクセス可能かを把握しておくことは困難です。

うまく設計されたヘルスケアブロックチェーンであれば、彼女の問題の多くを解決することが可能です。彼女の使用する機器はすべてブロックチェーンに接続しており、計測結果はチェーンにアップロードされます。

彼女は1つのアプリケーションから、自分のデータを概観することができます。その場合には彼女は、自分で計測したデータと、病院で計測してもらったデータの両方を、指先の操作だけで管理することができます。さらに、彼女は誰がどのデータにアクセス可能かをチェックして管理を行うことができます。

ひょっとすると彼女は睡眠パターンを病院の糖尿病専門医と共有したいと考えるかもしれません。その一方で、他の専門医(精神科/性感染症/薬物治療)で取ったデータは共通を避けたいと思うかもしれません。彼女の糖尿病の治療には関連性がないかもしれないからです。

背景

ブロックチェーン技術は、患者データの利用および共有の方法に変革をもたらし、仕組みを改良する可能性があります。機関を横断しての患者のケルスケアデータの共有は複雑で、結果として、患者を治療するヘルスケアプロバイダーも常にデータを利用できるというわけではありません。

さらに、患者はしばしば自身の個人的なヘルスケアデータを管理することができず、どの人物がどの情報にアクセス可能かを決定することができません。理想的には、患者は自己のデータを管理して、それによって自身が治療にさらに強く関与する権限を得るべきなのです。

多くの患者がすでに、バイタルサイン、服薬コンプライアンス、運動、睡眠の質、身体的機能、食事、気分と生活の質といった、様々な臨床指標を測定しています。しかし、データを効率的に共有することが技術的に困難なため、ケルスケアプロバイダーが常にそうしたデータを使えるわけではありません。

NEMプラットフォームの活用方法

ブロックチェーン技術はヘルスケアについてのデータ管理における、そうした問題の多くを解決する可能性を持っています。特にパブリックもしくはプライベートなNEMブロックチェーンプラットフォームは、ヘルスケアデータの患者中心のガバナンスに適しています。

そのコンセプトは、データ管理のアクセスコントロールや、データの暗号化を行うためのマルチシグコントラクトを活用して、ヘルスケアデータのプライバシーと管理を可能にするというものです。

さらにブロックチェーンは、様々なサービスプロバイダーや消費者がコンテンツを共有することのできる、あらゆるプラットフォームに適合する理想的なデータベースです。

NEMはJSONrest APIによって稼働しているため、プロプライエタリシステムを持つそれぞれの企業が容易にNEMプロトコルに接続してデータを共有し、同時にシステムをファイアウォールで完全に保護した状態にしておくことができます。このケースでは、NEMは安全で暗号化されたプラットフォーム横断型の取引手段を提供します。

患者は自分中心に意思決定を行うことができる

患者は自身のデータに自由にアクセスし、どの人物や機関が自身のデータを共有するのかを完全に管理することができるようになります。患者はアクセス許可を設定し、自身のアカウントを誰が閲覧し、誰が情報を記入できるのかを割り当てることができます。このアクセス管理はオフチェーンアプリケーションを使って利用することができます。

そのアプリケーションにより、患者はどの人物や機関がデータへアクセスできるのかを把握し、新しい許可の発行や、すでに発行した許可の取り消しを行ったり、データを検討するための時間限定のセッションを行うこともできます。

このコンセプトにより透明性が実現され、患者はどのヘルスケアデータが集められ、そのデータがどのように関連する人物や機関の間で利用されるかについて、自分中心に意思決定を行うことができます。

ブロックチェーンを基盤としたヘルスケアレコードを提供するモデルにおいては、ヘルスケア機関が患者の健康データへのアクセスを承認してもらった際には、そのデータ用のブロックチェーンが必要となり、データを解読するためにSALTとミックスしたそのアカウント専用のキーを使うことになります。

セカンドレイヤーの仲介ソフトウェアは、SALTで暗号化した時間限定のデータを、さらに暗号化するための手段として使うことができます。ヘルスケア機関はカスタマイズしたアプリケーションを使い、データを閲覧したり分析することができます。

ブロックチェーンへの照会はAPIを基盤として行われ、それによってあらゆるプログラミングのアプリケーションが、ブロックチェーンと接続できるようになります、つまり、EHRシステムを利用している病院も、自身のシステムを容易にNEMブロックチェーンと統合することができるのです。

モザイクとマルチシグネチャの応用

別のモデルでは、システムは、NEMプロトコルで利用可能な暗号法、モザイク(NEMのアセット)、そしてマルチシグネチャ契約のコントラクトを基盤として構築されています。そのマルチシグネチャのコントラクトによって、複数の人物や機関がアカウントのアクティビティや、あるアカウントのモザイクなどのアセットを管理し、追加のコントラクトを作成することができます。

NEMのマルチシグネチャは、あるアカウントの権利や権限を他のアカウントへ割り当てるコントラクトを作成します。このコントラクトは編集可能です。任意の人数の署名人がトランザクションに署名することを必要とするマルチシグネチャのコントラクトを作成することができます。これはm-of-n マルチシグと呼ばれ、mにはnの値以下の数字が入ります。ヘルスケアブロックチェーンのシステムでは、私たちは2-of-n マルチシグコントラクトを使用することになります。

そのような場合には、患者はコントラクトで2つのキーを管理し、患者のアカウントに関係しているコントラクトに含まれているそれぞれのヘルスケア機関が、1つずつキーを持つことになります。つまり、患者はコントラクトを編集するために必要となる数のキーを持っているので、管理を行う権限を持っています。

同時に、ヘルスケア機関もアカウント情報(暗号化されたメッセージなど)を閲覧し、トランザクションを行うことができます。患者は他の機関が行ったトランザクションに共同署名をする必要がありますが、そうした作業もオフチェーンアプリケーションのレイヤーで定めたルールの範囲内で自動で行うように設定することが可能です。

新しいデータは以下のような方法でブロックチェーン上に保存されます。患者のマルチシグネチャアカウントに関連するキーを最低1つ持っている患者もしくはケルスケア機関は、トランザクションを開始して、メッセージとしてデータが添付されたデータモザイクを送ります。

そのメッセージは暗号化され、解読キーが別のトランザクションで送られてきます。データモザイクのトランザクションが手動もしくは自動で共同署名された場合、そのトランザクションは特定のデータタイプに関連するアカウントに送られます。

これにより、患者のマルチシグネチャアカウントへのアクセス権を持つ人物や機関だけが、解読キーを使って患者のデータを閲覧することができるようになります。

実際には患者は複数のマルチシグネチャアカウントを管理することになり、それぞれのアカウントに特定の種類のデータが割り当てられます。このシステムにより、ヘルスケアプロバイダー間で、様々な種類のデータに対する様々なアクセス権を使い分けることが可能になります。

シャミアの秘密分散法

さらに別のモデルでは、シャミアの秘密分散法を使ってデータを暗号化することができます。この方法では、それぞれのデータインプットが、複数のパスワードと共に送られます。それらはそのデータやメッセージのためだけの個別のパスワードの場合や、複数のメッセージに対応していて、複数のメッセージブロックを解錠できるパスワードの場合もあります。

後者の例を使うことで、一連のメッセージを医師、病院、医療記録のカテゴリなどと関連付けることができます。そのため、例えば、特定の1人の医師に上記の情報を見てもらいたい患者は、それぞれのメッセージにその医師向けのシークレットキーを添付することができます。

もしくは、長い期間を経て様々な地域に複数の医師を持つ患者の場合は、健康問題に特に携わっている人々に向けたすべてのメッセージを解錠できる1つのパスワードを用意することもできます。

治療中の容態が原因で、患者が自身の記録を公開できないケースもあります。患者が権限を行使できない場合には、患者が新しい人物に閲覧権を承認できないような緊急時に必要となるアクセス許可が、信用のある第三者を利用することで発行されます。信用のある第三者は追加のキーペアを持つことができ、緊急時の手続きは地域の法令に従って規制を行うことができます。

医療用の画像などといった大容量のデータはブロックチェーン上での保存に適していません。この問題は、解読キーを持つブロックチェーンにリファランスを持つ、暗号化されたデータを保管しているデータレイクを追加することで解決可能です。データレイクは大幅にスケーリング可能で、画像や時系列などの幅広いデータを保管していくことができます。

すでにいくつかのブロックチェーンプロジェクトに応用されている別の現実的な手段は、上記の方法をIPFSを用いて適用することです。

そうした場合には、それぞれのファイルが、暗号化されたフォーマットにのっとって、ヘルスケア機関がホストをしている分散型サーバー上に保存され、データを解読するためのリンクとパスワードなしでは、アクセスすることはできません。それらのデータは、プライバシーとセキュリティの獲得のために、前述の方法で暗号化もしくは安全性の向上を図ることができます。

備考

ブロックチェーンがヘルスケアのデータ管理を改善する可能性は非常に高いです。ヘルスケア分野は構造的な変化について保守的なことで有名です。

この記事や同様のアイディアが業界をけん引し、NEMなどのすでに稼働している検証済みの技術を使って、「ケルスケアブロックチェーン」を実装することが可能であるということを実証したいと考えています。

NEMの稼働中アプリケーション

インドでAI、ビッグデーター、ブロックチェーン、そしてIOTを専門的に扱っている企業の1つであるRapidQube デジタルソリューションズは、すでに稼働中のNEMブロックチェーンを基盤としたプロトタイプであり、高度な医療健康レコードのアプリケーションを実装しています。

このアプリはNEMのプロトコルを利用して、患者が自身で選択した医療記録を、時間限定で必要に応じて、医療提供者と共有することを可能にします。これにより、患者は自身のデータについての完全な権限を手にすることになり、患者は治療行為により積極的に携わるようになるのです。

原文:The Healthcare Blockchain and NEM

 - NEM(ネム) , ,

  著者プロフィール

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WEBデザイナー/ディレクターとしてのリーマン生活を脱却し、FX専業(兼業?)トレーダーをやりながら、MT4のEA/インジケーターの開発やFX関連情報サイトを運営していました。

今ではもう暗号通貨に絞って福岡を拠点に隠密活動しています。主にNEMをガッツリ、EthereumのDappsは趣味程度に。10年近いトレーダー経験を活かし、暗号通貨相場のテクニカル分析もやってます。

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