セキュリティトークンの未来:セキュリティトークンのシステムを構築する四つの方法
最終更新日2018/10/18 公開日2018/10/18 この記事は 約12分 で読めます。
以下はNEMと関連の深いHe3Labsで最初にリリースされた記事の和訳です。
セキュリティトークンオファリング(STO)が最近話題になっています。
ICOユーティリティトークンのイメージは、規制による監視や蔓延する詐欺によって急速に悪化していますが、より民主的な資金調達方法へのニーズは依然として存在します。
セキュリティトークンは将来的なソリューションを提供してくれます。
それは、流動性と、誰でも利用できるという暗号通貨の性質を、必要な規制上の管理と組み合わせて、適切な方法で証券(例えば様々な形式の企業の株式)の代わりとなるトークンを実現するというものです。
しかし、トークンを証券法を遵守したものにすることは、それほど簡単ではありません。というのは、ほとんどのDLT(分散台帳技術)はラディカルなオープンアクセスと管理からの自由という原則のもとに作られており、一方で規制上のコンプライアンスは以下のような制限を設けることを要求するからです。
●ロックアップや他の制限期間を経て、初めてトークンを売却できるようにすること。
●最大数を持つトークン所有者たちが尊重されなければならない。
こうしたすべての要素が、規則によって、(証券の代わりとなる)トークンの動きを制限することになります。従来は、そうした制限や規則は、プロセスや「証券代理人」などの仲介業者を通じてお役所仕事的に施行されてきました。
トークンによって、お役所仕事や仲介業者ではなく、DLTを直接使用することで私たちが所有権や固有性などを確保することが可能になることを考えると、理想的なソリューションは、トークン移動についての必要な管理を行うための、より高度な技術的アプローチを採用することにもなるでしょう。しかし、それをどのようにして実行するのでしょうか?
ソリューションに取り組んでいる企業(Tzero、Securrency、Templumなどの特化型の取引所であることが多い)は、手札を明らかにしていませんが、以下に私は、あらゆるセキュリティトークンのソリューションが取りうる形式を説明することのできる、トークンの移動を限定する四つの基本的な技術的方法について紹介します。
目次
方法1―ウォールド・ガーデン(囲まれた庭)
(プライベートトークン、プライベートウォレット)
これは基本的には株式取引所、ATSなどの従来型の取引所のモデルです。
そこでの「トークン」とは、実際には取引システム内での証券の代わりにすぎません。トークンの動きを規制するルールは、ウォールド・ガーデンの取引所内で、ユーザーに代わって直接施行されます。
確かに、プライベートなトークンを持つプライベートDLTは、運営における高い効率性をもたらし、より一般的な暗号通貨の取引に加えて、そうしたプライベートトークンの取引も提供することが可能かもしれません。
しかし、二つのウォールド・ガーデン式取引所が協力してトークンの破棄と開発を行うことに同意して、二者間でトークンの「移動」を可能にすることはできますが、結局のところプライベートトークンはその性質上、単一の取引システムの外部に持ち出すことができません。
この方法では、企業とそのトークンのやり取りは取引所を通じて行わなければなりません。企業はトークンやDLTに直接アクセスすることはできません。
長所
●パブリックトークンでないため、規制をすり抜けて違法な状態で扱われるリスクが存在しません(管理の行われていないプライベート暗号通貨ウォレットや取引所で扱われることはありません)。
短所
●最悪の場合には、DLTによって実行されたのではないウォールド・ガーデン間でのトークン「移動」によって、トークンの損失につながるエラーが発生してしまうことがあります。
方法2―砂漠のオアシス
(パブリックトークン、プラットフォーム固有のプライベートウォレット)
この方法では、トークンそれ自体がパブリックなDLTによって実行され、その性質として自由に取引可能ですが(ERC20やStellarなど)、投資家が直接そのトークンを扱ったり、私的に所有することは決してできません。
それぞれのオアシス型取引所が(今日の一般的な暗号通貨取引所のように)ユーザーに代わってウォレットの管理を行っていますが、ユーザーがトークンをプライベートウォレットに引き出すことはできません。
それぞれの取引所は、ユーザーに代わってトークンの移動を規制するルールを施行し、ユーザーからのその取引所にトークンを移動するというリクエストを許可する前に、移動元のオアシス型取引所でも同様のルールが施行されているかを確認する必要があります。
この方法では発行元の会社は、自社のトークンを直接管理することが可能で、取引所と同様に会社の側にも適切な規則を施行する責任があり、発行元の会社を取引所そのものとして規制する要件が導入される可能性があります。
長所
短所
そうした管理はエラーを起こしやすい場合もあり、ユーザーがそうしたリスクに漬け込む金銭的な動機も存在するため、トークンが規制の行き届かない環境に置かれるリスクが生まれます。規制機関はそのことを懸念するかもしれません。
●プライベートウォレットでの所有が許可されていないため、投資家は自己資産の安全性を完全に取引所に委ねなければなりません。それによって、これまで起こってきた暗号取引所へのハックのように、回復不可能な資産の損失が起こる潜在的なリスクが生まれます。
方法3―スマートウォレット
(パブリックトークン、管理下のパブリックウォレット)
この方法では、トークンそれ自体はパブリックで自由に取引可能ですが(ERC20やStellarなど)、単一の中央機関が、トークンを所有する権限のある取引所かユーザーと関係のある、ホワイトリストに掲載されたウォレット間でのみトークンの移動が可能なようにしています。
そうしたウォレットはパブリックなものである場合もありますが、ウォレットのDLTアドレスに基づいてユーザーが取ることのできる行動を規制する、特別なDLTによる管理が必要となります。
これはスマートコントラクトやDLT上のマルチシグによる管理を通じて実施されることもあります。
実装されていたとしても、ウォレットは中央機関に「通信(phone home)」を行うことで、トークンの譲渡を承認するように設計されており、中央がKYCや該当のそれぞれのウォレットについての他の情報に基づいて判断を行っています。
この方法では、企業はトークンを直接かつ明確に管理することができ、中央機関が企業にそうした権利を付与しています。
長所
●投資家は取引所のセキュリティ状況を信頼するのではなく、自身のプライベートウォレットを持つこともできます。
短所
●これは開発を行う際には非常に複雑なシステムとなることがあり、管理の中央集権化を行っていることで、それを提供する組織に規制上の負担が大きくかかってくる可能性があります。
●管理を行っている中央当局が存在しなくなった場合には、投資家がプライベートウォレットを使って自身のトークンを移動できるようにするために、特別な手助けが必要となります(取引プラットフォームに移動を行う可能性が高く、オアシス方式と基本的には同じ仕組みになります)。
方法4―スマートトークン
(管理下のパブリックトークン、パブリックウォレット)
この方法では、スマートウォレット方式における「命令元への通信」機能が、特別なパブリックトークン自体の設計に内蔵されています。
これには、そのトークンを定義する特注の(そして非常に複雑な)スマートコントラクト、もしくはこの種のトークン定義を可能にするプロトコルレベルのDLT機能が必要になります。
基本的には、トークンそれ自体が、ウォレット間で譲渡可能かを「問う」ことができなければなりません。
この方法は結局のところは、KYCやウォレットアドレスに関連する他の情報に基づいて、どのトランザクションが受け入れ可能かを判断する中央機関が存在する場合があるという点で、スマートウォレット方式と非常に似たものになります。
しかし、コンセプトの上では、この方法は完全に分散型のシステムで、トークンは直接、発行会社、KYCの提供者などによって提供される、分散型の資格や規則の定義を確認します。しかし、そうしたシステムの設計は複雑で、機能するには幅広い産業で採用される必要があります。
長所
●投資家は制約を受けずに、標準的なプライベートウォレットのソフトウェアやハードウェアを利用することができます(特別なトークンがそのウォレットソリューションによってサポートされていることが前提です)。
短所
●実際に機能する完全なエコシステムのソリューションを作り上げるために、誰が規格を作り、誰が必要となる規制上のコンプライアンスをシステムに入力するのでしょうか?
●スマートコントラクト主導のロジックについての、標準的なセキュリティ上の懸念がここでも浮かびます。スマートコントラクトにおけるバグが、システムを回復不可能なほど破壊してしまう可能性があるということです。
どの方法がもっとも優れているのでしょうか?時間が経てば答えが出るでしょう。
短期的な視点で見れば、私はウォールド・ガーデンとオアシス方式がもっともリスクが低いので、市場にもっとも早く普及する可能性が高いと考えています。少なくとも一件のスマートウォレット方式のアプローチが開発されていることも知っています。
しかし、スマートトークン方式のアプローチは複雑で未知の部分はあるものの、長期的な視点ではもっとも優勢になると私は考えています。
一度構築して採用してしまえば、この方法は、非常に高い効率性、投資家へのより大きな管理権限付与を実現し、そして規制要件の意図に完全に適合しつつも、より民主的なエコシステムを達成してくれるはずです。
それこそが、まさにDLTがすべきことなのです。
著者プロフィール
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WEBデザイナー/ディレクターとしてのリーマン生活を脱却し、FX専業(兼業?)トレーダーをやりながら、MT4のEA/インジケーターの開発やFX関連情報サイトを運営していました。
今ではもう暗号通貨に絞って福岡を拠点に隠密活動しています。主にNEMをガッツリ、EthereumのDappsは趣味程度に。10年近いトレーダー経験を活かし、暗号通貨相場のテクニカル分析もやってます。
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